ジャズ教室の講師から

マウスピースを購入して少し練習した後、またトランペットから遠ざかっていたわたしが再び吹くことを思い出したのはその2年ほど後のこと。

仕事で音楽スタジオへの取材に同行することになった。

ジャズピアノの個人教授についてのリポートだったのだが、思いがけずそこでポケットトランペットと出会ってしまった。

そこの主が楽器マニアだったのである(笑)。

彼にとってそれはコレクションのひとつであり、数ヶ月に1度、手入れのためにケースから出すときついでに音もだすくらいで使っていないから、と。

なんと、それを預かり受けてしまった!

しかもサイレンサー付きだった。

そこで試しに音を出してみたが、さすがに音は出るものの、音階ときたら1オクターブがやっと。

運指もこころもとなく、そのピアノ教師が前で指示してくれるのをただ真似る始末だった。

その日、わたしは取材の助手の務めは全く果たせなかった。

帰り道もひたすら興奮して、黒くて小振りなケースを撫で回していたのを覚えている。

かなり愛用したけれど、とうとう返上する日がきてしまった。

なんでも、教室でジャズトランペットを教えてほしいという人だ現れてしまったとか。

わずか半年ほどのランデブー。

ああ、……もちろんそんな期間では運指を思い出すほども練習できず、ただ1オクターブの音階をいかに安定して演奏するかを気にしていろいろな吹き方を試すのが精一杯だった。

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